ある日突然、「解雇する」と言われたら、あなたならどうしますか。
解雇すると言われたときは、まずは、
- 解雇される日
- 解雇の理由
を確認することが大切です。
これらのことを確認する書類として、解雇通知書と解雇理由証明書があります。
解雇通知書と解雇理由証明書を受け取った際の対応について、弁護士が解説します。
解雇通知書・解雇理由証明書とは?
解雇の際、「解雇通知書」(解雇予告通知書)と「解雇理由証明書」が交付されることがあります。
解雇通知書(解雇予告通知書)と解雇理由証明書とは何か、解説します。
(1)解雇通知書
解雇通知書とは、会社が労働者に対し、解雇の意思表示を通知する書面のことです。
解雇通知書が届いてから解雇まである程度の期間がある場合は「解雇予告通知書」ともいいます。
解雇しようとする場合には、原則として、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません(労働基準法20条1項)。
また、解雇までの予告日数が30日に満たない場合は、原則として、「不足した日数分の平均賃金」を企業が支払う義務があります(労働基準法20条2項)。
この解雇までの予告日数が30日に満たない場合に支払われる平均賃金のことを「解雇予告手当」と呼びます。
(2)解雇理由証明書
解雇理由証明書とは、解雇事由について具体的に記載された書面のことです。
解雇理由証明書を労働者が請求すると、事業主は遅滞なく解雇理由証明書を交付する義務があります(労働基準法第22条2項本文)。
この解雇理由証明書には、例えば以下のことが記載されています。
- 解雇された労働者は、就業規則のどの条項に該当したのか
- 就業規則の解雇事由に該当するに至った事実関係などについて
【解雇理由証明書】
ただし、労働者が解雇を予告された後に、会社が示す解雇事由以外の理由により退職した場合、会社は当該労働者が退職をした後は解雇理由証明書を発行しなくてもよいとされています(労働基準法22条2項ただし書き)。
口頭で解雇を告げられた場合は解雇理由証明書を請求する
企業側から口頭で解雇を言い渡された場合は、解雇通知書や解雇理由証明書を請求しましょう。
解雇予告手当の請求の際や、不当解雇だった場合に、これらの書面があると証拠となり得るからです。
逆に、これらの書面を請求せずに口頭で言い渡されたままにしておくと、後で言った言わないの水掛け論になりやすくなってしまいますので、注意が必要です。
解雇通知書・解雇理由証明書を受け取った際に確認すること
次に、解雇通知書や解雇理由書を受け取った際は、内容が適切かどうかを確認する必要があります。
(1)解雇通知書で確認すべきこと
解雇通知書で確認すべきことは主に次のことです。
(1-1)解雇日はいつか
解雇通知書を受け取ったら、解雇日がいつかを確認しましょう。
もし解雇予告から30日未満あれば、会社は不足日数分の解雇予告手当を原則として支払う必要があります。
ただし、次のいずれかの場合には、労働基準監督署長の認定があれば、解雇する際に、解雇予告期間や解雇予告手当は不要です(労働基準法20条1項但書、同条3項)。
1. 地震などの天変事変や、その他やむを得ない理由により、事業を続けることができなくなったとき
……解雇予告期間を設けることが使用者にとって酷な状況のときは、即時解雇が可能となります。
2. 労働者に帰責性があるために解雇する場合
……懲戒解雇の場合、即時解雇が可能となることがあります。
もっとも、即時解雇されてもやむを得ないといえるほどに、重大な帰責性が労働者にある場合のみ即時解雇が可能です。
また、上記のほかにも、次の労働者に対しては、解雇する際には、解雇予告手当の支払や解雇予告は不要です(労働基準法21条)。
- 日雇い労働者(1ヶ月を超えて引き続き雇用される場合を除く)
- 2ヶ月以内の雇用期間を定められている季節労働者以外の労働者(2ヶ月を超えて引き続き雇用される場合を除く)
- 季節労働者であって、4ヶ月以内の雇用期間を定められている労働者(4ヶ月を超えて引き続き雇用される場合を除く)
- 試用期間中の労働者(14日を超えて引き続き雇用される場合を除く)
(1-2)解雇理由の記載があるか
解雇通知書に解雇理由や解雇予告に至った経緯について記載がある場合は、その理由につき、法律上解雇が認められる理由といえるかを確認しましょう。
なお、解雇通知書に具体的な解雇理由が記載されていなくとも、通常は、解雇理由証明書において、具体的な解雇理由を確認することができます。
(2)解雇理由証明書で確認すべきこと
解雇理由証明書については、解雇理由についてよく確認することが大切です。
まず、記載されている解雇理由が事実と違っていないかどうか一言一句確認しましょう。
また、記載されている解雇事由が事実と一致しているとしても、解雇事由に客観的合理性があり、なおかつ社会通念上相当であるかどうか確認しましょう。
解雇事由に客観的合理性や社会的相当性がない場合、不当解雇にあたる可能性があります。
客観的合理性が認められる例:
- 新卒、未経験者に対し、必要な指導や、適性を見るための配置転換を行った後も、勤務成績が著しく不良で、改善の見込みがない場合など
客観的合理性が認められない例:
- 社長と相性が悪いことのみを理由とする解雇
- 労働者の能力不足に対して会社が十分な対策をせずに解雇するなど
普通解雇なのか、懲戒解雇なのか、整理解雇なのかによって、解雇が不当となる場合の条件が異なります。
また、業務上のケガや病気をしている場合など、一定の場合に解雇が制限されることがあります。
どのような場合に、解雇が不当となり得るのかは判断が難しいことも少なくないため、判断に迷ったら弁護士に相談するとよいでしょう。
不当解雇だと思った場合の対応
不当解雇だと思った場合は、会社に「解雇に納得がいかない」ということを伝えましょう。解雇の不当性について伝えていない場合は、本人も解雇に納得していたと受け取られる可能性があるからです。
解雇事由の正当性については、解雇理由証明書の解雇事由が、客観的合理性があり、なおかつ社会通念上相当かどうかという点で判断します。
また、解雇が業務上のケガや病気をしている間になされていないかなど、一定の解雇を制限する規定に反していないかということも確認する必要があります。
個人で会社と対等に交渉をすることが難しいと感じた場合は、弁護士にすぐに相談しましょう。
会社と解雇について交渉をし、もし交渉で解決しない場合は、労働審判や訴訟も検討することになります。
労働審判や訴訟まで進んだ場合は個人で対応することが難しいことも少なくありませんので、弁護士に依頼することも検討すると良いでしょう。
【まとめ】不当解雇でお悩みの方は弁護士にご相談ください
解雇を通知された場合には、解雇通知書が交付されることが一般的です。
また、解雇の具体的理由を知りたい場合は、解雇理由証明書を請求することも原則として可能です。
解雇通知書や解雇理由証明書を受け取った際は、次のことを確認しましょう。
- 解雇までの日数→解雇予告手当の支払はあるか
- 解雇理由に客観的合理性・社会的相当性があるか→不当解雇でないか
もし不当解雇だと感じた場合、会社にその旨を伝えて解雇について交渉することも可能です。
ただし、不当解雇にあたるかについては、判断が難しい場合も少なくありません。
また、労働者個人が会社と対等に交渉することが難しいこともあります。
「不当解雇かも」とお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。